航空会社が読んでほしくない規則
EU規則261/2004は世界最強の消費者保護法のひとつだ。欧州で運航する航空会社は、フライトが遅延・欠航・オーバーブッキングになった場合、1人あたり最大€600を法的に支払う義務がある——しかし業界データによれば、対象となる乗客のうち請求するのはわずか2%未満だ。
理由は単純だ。航空会社はあきらめさせる技術を磨いており、ほとんどの乗客はルールを十分に知らない。
このガイドはそれを変えるためにある。
対象となるフライト
EU261は以下のいずれかに該当する場合に適用される:
- EU圏内の空港を出発するフライト——どの航空会社であっても対象
- EU圏内の空港に到着するフライトで、EU系航空会社が運航している場合
具体例:
- ✅ ロンドン・ヒースロー → ニューヨークJFK(ブリティッシュ・エアウェイズ):対象(EU発)
- ✅ ニューヨークJFK → パリCDG(エールフランス):対象(EU系航空会社のEU着)
- ✅ 東京成田 → フランクフルト(ルフトハンザ):対象(EU系航空会社のEU着)
- ❌ ニューヨークJFK → 東京(ユナイテッド航空):対象外
- ❌ バンコク → ニューヨーク(タイ国際航空):対象外
補償金額
金額は法律で定められており、交渉の余地はない:
| フライト距離 | 補償額 |
|-----------|-------|
| 1,500km以下 | 乗客1人あたり €250 |
| 1,500〜3,500km | 乗客1人あたり €400 |
| 3,500km超 | 乗客1人あたり €600 |
航空会社の常套句:「不可抗力」の真実
これが航空会社が最も多く使う反論だ。EU261は「特別な事情(extraordinary circumstances)」の場合、航空会社を補償義務から免除している。
真の不可抗力(正当な拒否理由):
- 深刻な悪天候(猛吹雪、ハリケーン、火山灰)
- 空港・空域の閉鎖
- 航空管制のストライキ
- 安全上の脅威や政情不安
不可抗力に該当しない(補償を受ける権利がある):
- 機体の技術的不具合——欧州司法裁判所は繰り返し「航空会社の管理範囲内」と判断している
- 乗務員不足やスケジュール調整ミス
- ITシステム障害
- 「運航上の都合」(意図的に曖昧な表現——受け入れてはいけない)
重要判例:欧州司法裁判所は *Wallentin-Hermann v Alitalia*(2008年)で、定期整備中に発見された技術的問題は不可抗力に該当しないと判断した。航空会社はこの判例を知らないと思って技術的問題を理由に挙げることが多い。
請求手順
ステップ1:証拠を記録する
遅延を示す出発案内板を写真撮影。予約確認書のスクリーンショットを保存。搭乗券を保管。
ステップ2:航空会社に正式な書面で請求する
「ご意見フォーム」は使わない。「EU規則261/2004」を明記した正式なメールまたは書簡を送り、便名・日付・遅延時間・請求金額を記載する。返答期限は14日間。
ステップ3:拒否または無応答の場合
出発国の国家執行機関(NEB)に申し立てる。多くの欧州諸国では無料の裁判外紛争解決(ADR)制度を提供している。
ステップ4:法的手段
少額訴訟が最終手段だ。裁判官はEU261に精通しており、法的費用は通常低い。自分で対応したくない場合は、AirHelpやClaimCompassなどの「成功報酬型」代行サービスを利用する方法もある。
申請前のチェックリスト
- ✅ EU261の対象フライトか?
- ✅ 到着地での遅延が3時間以上か?
- ✅ 遅延原因は航空会社の管理範囲内か?
- ✅ 出発国の時効期限内か?
4つすべて「はい」なら、下記の計算ツールで正確な補償額を試算してみよう。